十勝の木の紹介です。
立ち木で木が解る人。木の葉で、木が解る人。木の肌やかおりで解る人。木の仕事と一口に言っても、さまざまです。山で木を切ったり選木する人達は、木の葉や幹を見て、木の名前を言い当てます。建築材や家具材を生産する工場の人々は、木の肌やかおりで見事に木の名前を言い当てます。
1.ヤチダモ .セン
炎のような木目です。太いヤチダモの根の付近にタマ杢がよく出てきます。カバ類やナラ材と比較すると変色や傷が少なく、製材作業は決まって後に回されました。タモ、ニレの製材が終わる頃、冬の準備がはじまります。 厚板は盆材として産地に送られました。良質なセンは、突き板の用途でヨーロッパ、アメリカ、台湾に輸出されていました。フリッチ材と呼ばれています。木目の美しさ、とびっきり。
3.マカバ 4.ミズナラ
マカバは芯材の色具合を赤味が張ると表現しその色味で天上知らずの評価を得ました。確かに良い色です。メジロカバは、同じ仲間に入っていますが、芯材の色は違います。木質はいずれもしっかりしたものです。 機械や自動車が輸出される前、ミズナラの製材がヨーロッパ向けに輸出されました。日高山系のミズナラは製材にすると見事なピンク色に発色します。表面が乾くと家具や体育館の床で見る色に変わります。
5.ニレ 6.カツラ
水に強いと言う理由から、台所の備え付け家具に使われました。水に浸かったままの木材は大変長持ちします。何百年も河川の底に埋もれている、埋もれ木の出土は、不思議とハルニレ、オヒョウニレが多い。 ツンと鼻をつく香りがあります。ヒガツラ、アオガツラ、同じカツラでも随分違います。辺材の大きさ、芯材の色等。良質のヒガツラはあまり見かけなくなりました。熊の木彫りはシナの木で作られます。
7.イタヤ 8.シナ
立木の幹に小さな穴を開けると、少々甘い樹液がでます。これを煮詰めると、メープルシロップになります。白太の中に緑色の縞紋様が有り、カナスジと呼ばれ鋸の刃が欠ける程、堅いものもあります。 立熊の木彫りは全部シナ。シナの白太で作ります。シナにはアカジナ、アオジナがあります。アカジナの大径木は1mを超えます。オオバボダイジュのアオジナは白太の割合は多いのですが、60cm位のが最大級。
9.キハダ 10.アズキナシ
一寸晩酌の過ぎた翌日、隠し持ったキハダの内皮を口に含みます。不規則な胃腸の動きがニガ味に驚き正常に活動開始。この木は大好きです。雪の中に積まれた丸太の木口は大変映えます。 芯材は淡い紅色で、マカバの赤味は赤褐色に変わりますがアズキナシの紅色は持続します。大型材になりますが量が少なく利用されなかったようです。質感があり通直なこともあり加工性は良好です。
11.ヤマグワ 12.ハン
黄色味を帯びた芯材は美しいです。スクレーパーで鉋をかけると、羽毛状の鉋屑はハッキリと黄色です。キハダの黄色と異なり光沢があります。実は熟すとフルーティーな味がします。 この木はヤチハンと呼ばれています。材面は空気に触れると発色します。白い色から濃いやまぶき色に変わります。ヤチハンは中まで発色し乾くと釘も入らぬ程硬くなります。昔は釣具の浮き玉に使われたと聞いています。
13.シデ 14.オニグルミ
6cmの厚さに天然乾燥しさらに小割り、小鉢用に荒繰りしました。しかし6cmがまずかった。割れました。半分程失ってしいました。シデー話です。 実は動物の大好物です。エゾリスは冬用の食料を土に埋め保存します。ところが、食べ忘れたクルミが発芽し異常発生の記事がありました。結構なことです。
15.ドロノキ 16.ホオ
泥が入っている位に刃物の持ちが悪い。ドロの名の由来です。失礼な名を頂いていますが水中の耐久度は屈指です。白太の白さは十勝の広葉樹の中で際立ち輝く白さです。風に乗る種子は初夏の時間を教えてくれます。 年末の年賀状の頃、お世話になる方も多い筈です。彫刻の材としても有名です。伐採、加工にもよりますが、上手に乾燥した芯材は淡い緑色。木地鉋から飛び出す鉋屑は弧を描いたループ状になります。
17.エンジュ 18.アサダ
木の色の表現は大変難しいのです。生育環境により材質感や色は一応でありません。芯材の色は暗い茶です。チョコレート色に近いものもあります。十勝の木で最も濃い褐色です。 マカバの赤味、アサダの赤味、どちらも凄い色です。正座で説教される時、どちらの床が良いでしょう。どちらも良いです。玄関の 材はアサダが最良とされていました。硬い木ですが刃物との相性は良いですね。
19.アオダモ 20.サクラ
ミスターG、背番号1番、カケフさん、バッターボックスで振っていたバットの木はアオダモの木です。スポーツ用具に多く使われています。弾力性に優れ、辺材の輝きは硬材特有の透明感があります。 こぶしの花が終わり、サクラが咲くと春です。肌寒い日もありますが、葉桜となる頃カッコウも鳴き、畑仕事真っ盛りです。サクラの木は燻製のチップにされています。鉋仕事が楽しくなる程、良い香りがします。
21.シュリ 22.バッコウヤナギ
二、三年天然乾燥したサクラとシュリが並ぶとこれで正しいかなと思う程似て見えます。材に鼻を近づけると、サクラ特有の香りが残っています。こっちはサクラでこれはシュリザクラって言う訳。芯材は美しい赤銅色。 切れる鋸を使います。切れ味の落ちた鋸は材面が羽毛立ちます。三相60KWの帯鋸は1mを超える丸太を挽き割ります。鋸の選択を誤るとコントロールを失い、大変恐い事になります。柔らかな材程、気をはけました。
23.ハクウンボク
オオバ、ハビロ、いろいろ言いますが、山の人々はハビロでした。この木は不思議です。10mもあるドラムバーカーを通過し、皮がむけずに出て来る唯一の木です。これはすごい事なのです。